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紅葉(もみじ)鯛が旨いのには理由(わけ)がある! 有馬温泉で味わうA級グルメ

【 漁師を唸らせた紅葉鯛の味 】

魚には旬が二度あると言われている。例えば、フグは冬場の魚として知られているが、その逆の季節(夏)でも旨い。サワラ(鰆)も春の魚と書くので春のものだと思われがちだが、実は秋の方が脂が乗っていい。こういったケースは、魚の王様・鯛にもあてはまるようだ。一般的に鯛が持て囃されるのは、桜が咲く頃である。この時季の鯛は、産卵を控えて体をピンク色に染める。だから桜の花に見立てて、春に獲れたものを“桜鯛”と呼んでいる。

だが、漁場で話を聞いてみると、世間で囁かれているほど桜鯛が最上の味ではないらしい。彼ら、漁師は春の鯛より、むしろ“紅葉(もみじ)鯛”と呼ばれる秋の鯛を薦めている。越冬をした桜鯛は、体が締まり、一見旨そうに思えるのだが、実際にはその栄養を腹の中に宿す子に取られていると考えるからだ。その点、紅葉鯛の方は旨くなる条件が揃っている。5~6月に卵を産んでしまった鯛は、食欲が旺盛となる。くしくも高水温になる夏には、その餌となる海老や蟹などが活発に動き出し始める。甲殻類、貝、イカナゴなどを多量に食した鯛は、丸々と肥えていく。ましてやその喰いしん坊な鯛が海流の激しい地域に棲んでいようものなら、グルメな上にスポーツマンな鯛が出来上がるのだ。

11月~12月半ば(近年は温暖化で水温が上がっているので、その旬が長くなったと言われている)に水揚げされた紅葉鯛は、ウロコに赤みが増し、まるで木々が色づくような様相を見せている。冬を迎えるため、たっぷりと食事を摂ったからであろう、脂乗りもいい。その上品な脂乗りと、食感は他の魚では味わえないほどの上物感を発している。だから紅葉の頃の鯛が旨いと漁師達は口を揃えるのだ。

【 ストレス緩和で旨い魚に 】

ところで、明石で揚がる鯛が、なぜ有名なのかを知っているだろうか。明石海峡や播磨灘一帯で獲れる魚を、地元では“前もの”と呼んで重宝がる。江戸時代に書かれた「播磨鑑」には「明石には名物の鯛があり、赤メバルも多く、浜は大変賑わっている」と記されている。この魚の宝庫となる因が林崎(明石)沖に位置する鹿の瀬である。この海底の丘陵地帯では植物性プランクトンや海藻が発生し、それが原因で動物性のプランクトンが繁殖する。これを餌とするために多くの魚が集まってくるのだ。この餌場で食した鯛は、いわば美食家。そして速い潮流の中で泳ぐために、身が引き締まっていく。

しかし、明石の鯛が旨いのは、こういった自然の摂理ばかりではない。明石の浜で水揚げされた鯛は、ある考えに基づいて生かされている。それは水揚げされたばかりの魚は、ストレスを有しているとの考え方だ。実際、これまで水中でしか暮らしたことのない魚が空気中に放り出されると、「自分はどうなってしまうのだろうか」との不安を抱く。そのため全身にストレスが蔓延してしまう。そんな魚を一晩だけ広い水槽に入れて泳がせてあげる。すると、翌日二度目に空気に晒された時には「いずれ元の水中に戻してくれるだろう」と楽観視するのだとか。これを生け越しと称すのだが、明石以外の漁協ではあまりこの手法を用いていないようだ。一晩生簀で泳いでいた魚はストレスが柔らいでいるとともに胃の中のものを排出してしまっている。そのために臭みもなくなり、旨い魚となっていく。

傷をつけずに捕らえた鯛は、こういった要素が加わり、名物と言われるまでになった。だから今でも築地や赤坂の料亭では、明石鯛を用いたがる。

【 本物の明石鯛を食す価値とは・・・ 】

東京の高級料亭では、ルートを駆使して貴重品である明石鯛を入手する。貴重品には違いないが、明石に隣接する神戸(有馬温泉)ではそれよりも簡単に明石鯛を手に入れることが可能だ。ただ近隣の消費地とはいえ、12月に入って鯛を入手するとなると、通常の時期より難しさは生じる。水温が下がると、鯛は水深い場所に移動してしまう。そのために腕のいい漁師でさえ獲りにくくなってしまい、狙って漁をすることを中止せざるをえなくなる。もし12月以降に地方でやたらと明石鯛と記されたものが出回っていたら用心した方がいいかもしれない。それほど明石鯛は貴重品なのである。現在、明石鯛が漁獲される6つの漁協(明石浦、林崎、江井ヶ島、東二見、西二見、神戸市の漁業協同組合)では、ニセ物を防止するために800g以上の真鯛に商標タグを取り付けるようにしている。こうして本物とニセ物を区別して出荷している。

「万葉集」には「鯛を醤酢(ひしほす)に漬けて食した」という歌が出てくる。今のように縁起ものとして使うようになったのは、多分平安時代あたりからではあるまいか。「めでたい」の語呂合わせにより重宝がられたとの説や「大位」に当てたものであるとの説がある。養殖技術が進み、天然ものが珍しくなった現在、漁師が旨いと評す明石の紅葉鯛が食べられたのなら、グルメにとってはそれこそ「めでたい」の一語につきるのではないだろうか。

(文、曽我和弘)

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