中村奈津美 丹波布展「紡ぐ・染める・織る・仕立てる」
中村奈津美 丹波布展
「紡ぐ・染める・織る・仕立てる」
展示期間: 2019/11/2 土曜日 〜 2019/12/1 日曜日
展示場所:ガレリア・レティーロ・ドウロ
兵庫県神戸市北区有馬町835
作家インタビュー
Q. 作品の特徴を教えてください
作品制作は、布を織るための糸を手紡ぎするところから始まります。棉から糸車を使って糸を紡いで、草木を煮だした液で糸を染めています。それを手織りで織ります。そして織られた布からポーチやストールなどを制作します。使用する棉は、環境や生産されている方の負担にならないように、できるだけオーガニックのもの、フェアトレードのものを使うようにしています。
紡いだ糸は、主に家の周りにある植物を採集したものを煮出した液に浸し、染めています。すべて草木染です。栗、梅、桜、ヤシャブシ、やまもも、こぶな草、ギンモクセイなど、どの色も自然のとてもいい色が染まります。同じ植物でも、採集する年、場所や時期によっても違う色味が出ることもあり、染めてみからのお楽しみでもあります。藍の糸は紺屋さんで染めてもらっています。
織る布は、制作するものに合わせて、糸の太さや綿の種類を変えるようにしており、例えばストール用に織る場合には、柔らかい感触の棉を、細めの糸に紡いで、あまり重くならないようにしています。
Q. 手紡ぎの作品を制作されるようになったきっかけを教えてください
以前にステンドグラスを勉強していたのですが、自分にとっては、もっと日常で使えるもの、手に触れることのできるもの、環境に配慮して、できるだけ土に還りやすいものをつくりたいと思うようになりました。その後、竹細工に興味を持ち、勉強していた時期もありましたが、自分には合っていないと感じ、ほかに長く続けていける手仕事を探していました。
そんな時に、私は神戸出身なのですが、近くの丹波市で糸紡ぎから手織りで布を織るまでの技術を伝承する施設があることを知りました。その後、丹波へ数年間移住し、丹波布(*)といわれる手紡ぎ糸を使用した手織りの技術を学びました。
実際に教わりながら制作してみると、紡ぎ、染め、織りの、どの工程も奥深く、まだまだ試してみたいことがいろいろあるな、とわくわくしました。当たり前のことなのですが、ほぼすべての布は糸からできている、ということを改めて意識しました。糸の色、太さ、縒りの強さによって表情の違う布ができる、そこに面白さがあると感じ、この仕事を続けていきたいと思いました。
Q. どういう人に使って欲しいと思いますか?
気に入っていただけたらどんな方にでも。普段使いでも、特別な時に使っていただくのでも、その人なりに楽しんで使っていただければ、嬉しいです。
使うことによって、生地はだんだん柔らかくなっていきますし、色落ちもしますが、自然の植物から出た色なので、その色落ちの変化も美しく、楽しむことができると思います。
Q. 来場者の方に一言
ぜひストールを一度、巻いてみていただけたらと思います。実際に身につけていただくと、やわらかい質感を感じていただけるのかなと思っています。
ぜひ手にとって作品を見ていただき、手紡ぎ、手織りの布ならではの手触りの気持ちよさ、風合いのよさを感じていただけたら嬉しいです。
(*)丹波布:現在の兵庫県丹波市青垣町佐治にて、江戸の末期から明治の終わり頃の40年~50年の間に生産されていた、糸車で棉を手紡ぎし、草木で染色、手織りで織り上げた経緯の格子柄の布で、緯糸に絹の「つまみ糸」を織り込むのが特徴です。昔は京都では「佐治木綿」地元では「しまぬき」と呼ばれていました。元々、農閑期の農家の主婦の副業として始められ、当初は自家用であったものが、やがて販売専門となり、京都や大阪で売られるようになりました。主に座布団、夜具地、丹前などに用いられ流通していたのが、いつの間にかふっつり途絶えてしまったといわれています。昭和の初め、思想家で民藝運動を起こした柳宗悦により京都の朝市で見出され、復興された後、現在も丹波布伝承館にて技術の伝承が続けられています。
作家プロフィール:
中村 奈津美
1980年、兵庫県神戸市生まれ。
高校を卒業後、長野県にてステンドグラスを学ぶ。
2012年、兵庫県丹波市にある丹波布伝承館にて、手紡ぎ・染織の技術を学ぶ。
2015年、大分県の国東半島に移り住み、3soku(さんそく)を立ち上げ、日々制作に取り組む。
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