吾輩は宿屋の亭主である。旅に出てけっこう得をする事がある・・・
こんな書き出しで始めているが、日頃は「○○でお得!」とか宿泊プランをつくってお客様方に、いかにお得か訴えて集客しようとしている。でも何かが違うと思いながら背に腹は代えられず行っている。
有馬温泉と同じ日本三古泉の和歌山の白浜温泉で仕事が入った。その前日の夕方に大阪で打合せが入っていたので、白浜で泊まる事にした。
?3~4年前に同じような仕事が入り、年がら年中同価格をうたっている旅館に一回泊まりたくて調理長と次男坊を連れて行った。価格は確かに安かったけれど少なくとも僕には満足感はなかった。夕食後白浜のまちに出かけて行った。御所坊のお客様から頼まれていた事があったからだ。白浜の飲食街なのだが半分以上は閉まっていて、一軒素敵なビア・ホールと魅力的な中華レストランが目に付き利用した事がある。
?今回白浜に到着するのは夜の10時頃になるので、まずビア・ホールの場所をネットで検索して、その近くのホテルを取る事にした。ここだという所を探して、ネットエージェントで検索。素泊まり6.300円駐車場代が1.000円別途必要。
宿の雰囲気を知るのには電話をすれば良い。そして料金を聞けば良い。仮にネットエージェントより高い料金を提示されても「ネットでは○○円じゃないですか?」といえば良い。たいがいはネットより安くなる。手数料がいらないからだ。「手数料分引いてよ!」と言ってもダメな所がある。意外と大きな都市ホテル。これは部門に別れていてそれぞれ縦割りで売り上げを競っているからだ。今回提示された料金はネットと同じだったが駐車場代が無料だという。10%以上安くなったと言える。これは旅を楽しむ一つのコツと言える。
?白浜に着いたのは10時をまわっていた。部屋に荷物を置いてすぐ夜のまちに出かけて行った。街は相変わらず半分以上は店が閉まっていたが、目的の店は人がいっぱい入っていた。まずは中華レストランで軽く一杯。この店もお客様は多いし近くのスナックからもおねえちゃんが出前を注文するようだ。今回は〆ではないのでシュウマイとビールを注文し、軽く一杯やって後、ビア・ホールに行った。ちょうど今までいていたお客が帰って所。さすがに混雑している時に楽しむ事は難しい。
?カウンターの席に座ってテーブルの上を片付けられてから、なぎさビールのピルスナーを注文した。肴は鳥のパテ。
マスターも一息ついたようなので話かけた。すぐに「金井さん?」と彼が言ったのでびっくりした。前回来た時は名前も伝えていなかった。でも彼も変な客だなあと思って調べたようだった。そうなれば話は弾むしビールも進む。
?彼は湯布院に行きたいと思って奥さんと出掛けたそうだ、あちこち回って湯布院で滞在し二人で100万ほど使ったという。そして湯布院の中でも亀の井別荘を一番気に行ったという。たまたま下足番をしていた中谷さんを見つけ「僕はあんたに会いに来たんだ!」と言って話しこんだという。なかなか生意気な36歳のマスターだ。ここでいう生意気というのは僕にとってものすごい褒め言葉で使っている。「中谷さんは僕のお師匠さんだ!」というとさらに話は弾み時計の針は12時をまわってしまった。
?翌日、彼が時間をかけて作っている宿を見せてもらう事になった。白浜の昔、華やかだった通りの木造の家をさわっている。昼間は実家のある龍神で百姓をやり、夜はビア・ホールそして何時か宿をしようとしている。なかなか楽しい時を過ごす事が出来た。僕にとって非常に有意義な旅ができたと思う。
?ここで改めて旅を楽しむコツの話をするならば、茶の湯と同じ事でで、亭主は商売をやっている以上、お客様を迎えようとしている。その為にそれぞれ仕掛けをつくっている。これは自慢料理や自慢のしつらえかもしれない。よいお客になるには、その亭主の自慢を見つける事が出来ないといけないし、それをわかる知性がないといけない。
それが出来ると旅はすごく楽しめる。最近行った店が良くないと悪い口コミを書く人がいる。確かに全部が全部良い店ではないかもしれないし、自分の好みでないかもしれない。いくら宣伝やクチコミに影響を受けたと言っても自分で選んだのには違いがないじゃないかと思う。つまり自分に合う店を選ぶ感性を自分が持っていない。または、うまく良さを引き出して楽しめなかったという事ではないのかと思う。亭主と客がうまく合えばこれほど旅を楽しめる事はない。そしてまた行きたいと思う。そうなれば活性化するのになあ・・・と思いながら、一方でお得なプランを考えている。
白浜温泉のおすすめレストラン ミルク&ビアホール 九十九 0739-43-0702