有馬温泉の名物といえば、山椒が有名だ。
有馬周辺の山などで採れるトゲの多い山椒は一般的なものより香り高く、辛味が効いている。
それらを使った煮物料理「有馬煮」などは、多くの人が知るところである。
有馬の佃煮、そして山椒による伝統の味を現在も伝えているのが、「佃煮元祖 川上商店」である。
創業1559年、「帝国データバンク」によれば、兵庫でもっとも古い歴史をもつ商店だ。
今回は2016年3月に新しくオープンした「山椒彩家 川上商店」にお邪魔した。
店舗を埋め尽くすほどの山椒需要に応えるための山椒専門店だ。
つやつやの木材が眩しく快適な店内には、さまざまな山椒グッズが陳列されている。
ちりめん山椒や山椒昆布、黒毛和牛や青魚と合わせて濃く味付け有馬煮や伝統の品はもちろん、携帯に便利な山椒ペンや贈り物に便利な山椒レター、香りで野菜が美味しくなる山椒ドレッシングといった変わり種も盛りだくさんで、まさに山椒づくしだ。
「川上商店」の名前の由来は1191年、仁西上人とともに有馬の地を訪れた祖先の出身地とされる、奈良県吉野の川上村である。
1559年創業と先述したが、実はこれは正しくないかもしれない。
人形筆の開発者でもある川上伊助氏が、山椒を使って佃煮商売をしていたという最古の口伝が1559年というだけであって、創業自体はそれよりずっと前という可能性がある。
自慢の花山椒に葉山椒、そして実山椒はそれぞれ風味豊かで楽しい。
甘味のある花山椒にほどよい食感の葉山椒、茶漬けに最適な実山椒、すべて買ってもまったく損しない。
だが、この川上商店には他で味わえない幻の逸品がある。それがこの「辛皮」だ。
原料はなんと、山椒の木の皮。外皮と幹の間に存在するごくわずかな薄皮を使う。
新鮮な山椒の木からしか作ることができないので、大量生産はほぼ不可能なのだ。
ご厚意により、この幻の品を一口いただけることとなった。
最初のうちは出汁の旨味こそ感じはすれど、それほど辛さは感じない。
だが、一分経つか経たないかぐらいのところで、猛烈なしびれが全身をかけめぐる。
この辛さは並の山椒の比ではない。だが、山椒が好きな人にとってはたまらなく好きな味だろう。
間違いなく酒が欲しくなる、山椒好きによる山椒好きな方のための逸品だ。
我こそは山椒好きという方、是非とも一度味わっていただきたい。
現在、山椒はスローフードとして高い注目を集めている。
成分として含まれているサンショオールやサンショウアミドが胃の働きを助け、新陳代謝を活発化。
冷え性改善への効果が期待されているのだ。
もっとも山椒は古来より薬草として知られていたわけで、それをすっかり忘れていた現代人が「そういえば!」と思い出しただけなのであるが。
山椒料理の地有馬温泉でも、山椒を盛り上げるための動きが盛んである。
旅館「御所坊」の経営者金井啓修氏が中心となり「有馬山椒プロジェクト」を開始。
一時は絶滅寸前であった野生の有馬山椒の栽培数を増加させるべく、地元農家と連携した取り組みを行っている。
「訪れる方へ最大限の満足を提供するため、一丸となって取り組める」
これが有馬という歴史ある観光地の強さなのかもしれない。
施設名 川上商店
住所
山椒彩家:〒651-1401 兵庫県神戸市北区有馬町1172番地
神戸電鉄有馬温泉駅から徒歩9分
有馬里駐車場から徒歩13分
本店:〒651-1401 兵庫県神戸市北区有馬町1193番地
神戸電鉄有馬温泉駅から徒歩8分
有馬里駐車場から徒歩12分
南店:〒651-1401 兵庫県神戸市北区有馬町869-1番地
神戸電鉄有馬温泉駅から徒歩7分
有馬里駐車場から徒歩10分
営業時間
山椒彩家:9:30~17:30
本店:9:00~18:00
南店:9:30~18:00
定休日
山椒彩家:水曜日
本店:年中無休
南店:火曜日・水曜日