(1) 有馬サイダーのフローズンを造りたい!
インターネットでチェックすると海外で普通に売られているフローズンコーラ
大阪万博会場でフローズンコーラーが販売された。43年前のこと。
かき氷の様だが全体に味が付いていて、炭酸のしゅわしゅわ感があり、衝撃的な味だった。
しかし酒を飲むようになると甘い炭酸飲料より、ほろ苦いビールの方に嗜好は傾いていった。
年月が流れ、有馬でサイダーを復刻販売するようになった。有馬サイダーが売れるにつれてフローズンコーラの有馬サイダー版が作れないかと考えるようになった。
ある日、仲間のシゲルがネットオークションでサンヨー製のフローズン飲料の機械を見つけて連絡してきた。機械は13年前に製造中止になっているので交換部品があるかどうかもわからない。一か八かの博打で機械を購入した。
重量は250kgあるという。有馬里駐車場に届いたものの、どこかで動くかどうかのテストをしなければならない。プロパンガスを運搬するリフトの付いたトラックでパンドボウの店先に運んだ。動力の延長ケーブルをつくり、水道を直結。排水も取ってスイッチを入れた。
冷凍のコンプレッサーとシリンダーの攪拌器は動くもののそれ以外は全く作動しない。
困った時の山田さん頼み。このおっちゃんは何でも直す。
まず水は・・・ストレーナーが錆びて詰まっていた。しかし図面も何も無いのでとにかく修理屋を呼ぶことにした。
サンヨーのサービスセンターに電話をするとパナソニックが出た。そうか合併したんだ。
サービス担当が来たけれどお手上げ、会社の詳しいものに聞いて出直すとの事。それが1回目。
2回目は電磁バルブを4つ持ってきて交換。中国から取り寄せたという。マニュアルと図面を持ってきてくれた。しかし交換しても動かない。
あ・・・修理代はいくらかかるのだろうか?
(2)13年前の機械の復活記録
山田さんも時間があると見てくれた。水がシリンダーに入らない。ポンプがダメなようだ。結局分解して・・・インペラがちびてしまっているようだった。
サービスに電話をして、インペラだけは無理でポンプを2つ手配。
今度はサービスマンガ2人来て、あさの10時から夕方まで・・・ポンプのモーターが逆転していたり、ひとつのモーターが動かなかった。
このモーターは山田さんが分解修理した。
翌朝サービスから電話がかかってきた。「もう、お手上げです。すみません!」
「今までの修理代金は?」と聞くと、今までのはいらないという。
ラッキーなのかどうかわからない。たぶん交換した部品だけで10万円は下らないと思う。
山田さんは「あいつらサービスマンは回路を読もうとしない。これから回路をひとつづつ調べるわ!」といってくれた。
更に次の日、山田さんが修理にかかってしばらくして・・・「動いたで!これで良いはずだ」
シゲルと機械の所に駆けつけた。
この機械。まずシロップタンクのところに炭酸ガスボンベを接続する。このガスの圧力でシロップを機械に送り込む。水はポンプで送り込まれシロップとミックスされてシリンダーに送り込まれる。シリンダーを冷却しながらシリンダーの中で攪拌させて、炭酸ガスの入った氷を作る。レバーを開くと炭酸ガスの力で押されて出てくる・・・この装置が2組セットされている。
炭酸ガスを使用する為に色々センサーなどが付いて、ややこしい構造になっている。
今回山田さんはまずシロップが出ているかどうか検地するセンサーを掃除したところ無事に動いたのだ。まだリレーの接点や触るところがあると思うが、とりあえずこれで動くし、冷却できる。
次は殺菌剤を入れた水を使って機械の内部を洗う。そして60%ぐらいの糖度のシロップを作る。このレシピはなかなか教えてくれない。しかし材料はそろっている。
あと発泡剤が必要という話がある。
しかし・・・・機械はガナリ音を立てるが、シリンダーの中の水はシャーベット状にならない。あとはどこが悪いのだろうか?
シリンダーの容器の部分は凍り、その部分に接する攪拌機の部分から音がしている。
シリンダーの中の液体を抜いてみるが甘くはない。つまり炭酸ガスは来ているがシロップは来ていない。だから真水に近いのでシリンダーの部分がすぐに凍り、異常を検地してそれ以上凍らす事を止めてしまっている。
では、どこまでシロップは来ていて何処から先は行っていないのか!?
シロップタンクから炭酸ガスの力で機械内に送られ、シロップが送られているかどうかのセンサーを経て、シロップの濃度を調整するバルブから水と混合してシリンダー内に送られる。
山田さんは調整バルブの部分を分解し、シロップが来ている事を確認。水との混合の際にシロップ側に水が流れないように逆止弁が付いている。その弁を調べた。どうやらここが悪い。分解して掃除をした。
機械を動かすと、シリンダー内はまたたく間に白濁してシャーベット状になりだした。
“復活”だ!
「この状態で正解だ!」考えてみれば誰も正常に動く姿を知らなかった。
しばらくしてコックをひねると、想像していたフローズン有馬サイダーが出てきた。
見た感じは発泡剤も必要なさそうだ。
あ!・・・感激の瞬間! その場に居合わせた皆々が試食を行った。仲間にも電話をして集めた!
多くの人が始めて味わう感覚だ。「これは売れる!」皆が確信した。
(3) ・・・・・でも考えたらシロップがいる
試作を作る為に、製造委託している鉱泉屋さんからシロップを分けて頂いた。
しかし実際に販売する為には、自分達でシロップが創れないと濃度や味の加減が出来ない。
「レシピを教えてよ!」・・・といっても先方は教えてくれない。だったら自分達で作ろうということにした。
まず知り合いのワイン醸造の社長所が昔サイダーを作っていたと言うのでサイダーの作り方を聞くことにした。
「簡単なレシピだと思うよ!」ということで、教えて頂いた近くの香料屋を探す・・・・
香料会社に出向き、将来有馬でサイダーを製造する事の展望も含めてレシピを作ってもらう事の依頼した。
しばらくすると「出来たよ!」という電話があり、試供品を受け取った。
右がコピー商品。左が有馬サイダー
コップに入れてブラインド試験・・・・・誰も違いがわからなかった、クエン酸とりんご酸の比率が問題だといっていたが・・・・
これでフローズン有馬サイダーは何時でも作れるということになった。
そして有馬温泉で自社生産をするのも可能となった。